映画レビュー 『きっと、うまくいく』

先日、友人から面白いと勧められたこの映画。なんとインド映画である。私がインド映画を視聴するのは本作が初めて。インド映画のイメージといえばやはり、歌って、踊って、スパイシーな感じ。私はミュージカル系の作品には興味が無かったので、まあ本当に面白いのかどうかは半信半疑。AmazonPrimeで見れる作品じゃなかったら多分見ていなかったと思う。良作に巡り合わせてくれたAmazon大明神、ありがとう。

 

あらすじ

 

本作は2009公開のインド映画。原題は【3 Idiots】。原題の通り、3バカのキャンパスライフを中心に描かれている作品。邦題の『きっと、うまくいく』は本作のキーワードである“Aal Izz Well”(アール・イーズ・ウェル、“all is well”の視覚方言)を訳したものである。ちなみに主題歌は“Aal Izz Well”って曲名。

舞台となるキャンパスはインドトップの理系単科大学ICE。モデルは多分インド工科大学。主人公はエンジニアより動物写真家になりたがっている丸顔の青年、ファルハーン。ファルハーンがナレーションも勤める。そして主人公と寮が同室になるのが、実家が貧乏な苦学生ラージューと、本作のキーパーソンとなる秀才、ランチョー。大学卒業以来連絡を絶ってしまったランチョーを、ランチョーに大学時代大きく関わった人物たちで探しに行く。またその道中でのファルハーンの回想によって物語が展開される。

 

エリートは幸せか

 

この物語の柱となっているのが、《エリートへのレール vs 自由な人生》という構図である。インドトップの理系単科大であるICE、卒業すればインド国内の給与水準から考えれば破格の好待遇でエンジニアとして働くことができる。モデルと思わしきインド工科大学を見てみても、グーグルやソフトバンクの経営陣の中にOBの名前を確認できる。世界的視点から見れば、英語が使えない日本の学生よりも重宝されるに違いない。このため、親が自分の子供に少しでも勉強の才能を見出すとすぐにエンジニアにさせようとするシーンが作品中には出てくる。したがって、ICEに入学できたとしても、親からのプレッシャーは尋常ではない。そして、作品中では重圧に耐えかね自殺をしてしまう学生が現れる。卒業制作が間に合わず、留年を言い渡されてしまったのだ。この留年を言い渡したICEの学長こそが、エリート主義の権化として本作では描かれる。膨大な知識を身に着け、試験で高得点を取り、大企業に雇われる優秀なエンジニアとなることを学生に強いるのである。この学長と対照的に描かれるのが秀才ランチョーである。ランチョーは学問を学ぶ真の意義について唱え、エリートへのレールからは外れた自由奔放な生活を送る。親からエンジニアになるように切望されていたルームメイトのファルハーンとラージューは、そんなランチョーから次第に影響を受ける。

 

私はランチョーのような考え方は今まで持っていなかった。どちらかといえば学長側の考え方で生きてきたように思える。今思えば、それだけ義務教育期間の自分には試験の点数という拠り所しかなかったのだと思う。そして高校・大学と進み、自分より優秀な人間ばかりに出会い、一体自分はなんのために学ぶのだろうかと思うことも増えていた。「成功は追い求めるものではない。成功はついてくるものだ。」これはランチョーの台詞のなかの一節である。私は知らず知らずのうちに成功とは何かを探し求めていたのかもしれない。"成功がついてくるような生き方とはどのようなものか"を探すことにキャンパスライフを使うべきなのかもしれないと思った。

 

 

他にも面白い登場人物や伏線回収とかあったけど、まとまりがつかなそうだったので今回はこれくらいで。コメディ映画(ここで書くのか)らしく笑いポイントもたくさんあった。あっ、もちろん歌と踊りのシーンもガッツリあった。