映画レビュー 『フォード vs フェラーリ』
私はクルマおよびモータースポーツが大好きなので、この映画の公開を知った時には必ず見にいくと決めていた。
また60'sのモータースポーツの知識はほとんどなかったので、勉強にもなるだろうなと考えていた。
私にとってルマン24時間レースといえば、プロトタイプカーであった。ちょうど私がモータースポーツにのめり込み始めたころ、ルマンのトップカテゴリーはすでにハイブリッドマシンで争われ、言うなれば「アウディ vs トヨタ」の様相を呈していたからである。
私はあえて、事前に当時のルマンについては一切調べることなく劇場へと足を運んだ。その方がよりレースの興奮を味わえると思ったから。
開幕早々に素晴らしいエンジンサウンド。
やっぱり大排気量マルチシリンダーNAエンジンの音は最高だなぁと思わざるを得なかった。
マシンが奏でるサウンドだけで十分エンターテイメントとして成り立ってるなと感じた。
言い換えれば、仮にスマホみたいな端末で見るのはやや勿体無いのかなと。
まあアカデミー音響編集賞とってるくらいですからね。
もちろん人間ドラマも見どころだった。
男と男が自分の気持ちをぶつけ合ってより良いものを作り、勝利を目指していくというある意味スポーツものでは王道かもしれないストーリーである。
自分も何か熱くなれるものに取り組みたいなと思わせてくれるような。
さらにこの映画を面白くしている要素として挙げられるのは、天下の大企業フォードの存在である。
フォードはアメリカ有数の大企業であるが、当時経営不振に直面していた。
そこで目をつけたのがモータースポーツ活動によるイメージアップであった。
つまりフォードにとってモータースポーツはビジネスの一環であり、あくまで、広報、興業として捉えていた。これが主人公たちのモータースポーツに対して純粋な""競技""として向き合おうとする姿勢とぶつかることになる。
フォードと対照的に描かれるのがフェラーリである。フェラーリはモータースポーツに勝つために存在する企業であり、経営サイドはレース活動を決して侮ることなく、真摯に向き合っていた。
題名の『フォード vs フェラーリ』には込められた意味は、決してスピードの勝負という意味だけではなかったのである。